1046ワークス24口

とーしろさんの趣味よもやま話の通用口。

「読書感想 『侠飯 福澤徹三』」

 

 書店でたまたま目に入った背表紙で、
侠客の『侠』にご飯の『飯』で変わってるなというのが第一印象。
 手に取ってみると装丁画とあらすじから料理モノであることがわかり、
さらにどうもヤクザの男の料理というから変わりダネで興味をもち購読。

 

 

 内容は、なんの目標もなく、勉強したいわけでもく大学に入り、
乱れた部屋と生活、食習慣で暮らし、
そして時期がきたので周りに追い立てられるように就職活動をするという、
ありがちなどこにでもいるだらだらした青年、良太が主人公。

 

 

 彼が就活に追われる師走、
たまたますぐ近所でヤクザたちの抗争に出くわし、
そのヤクザである柳刃と舎弟の火野をかくまうことに。
 だが柳刃は明日をもしれぬような稼業だからこそ食べるモノは1日1日しっかりしたい、
という理論の持ち主で、居候先の良太の部屋に
無尽蔵のブラックカードで通販で冷蔵庫から調理道具や様々な食材を取り寄せ自炊を始める。

 

 

 自室にヤクザに居座られて、警察や知人友人に告げ口をすると
捕まえて拷問し報復すると脅されて、ヤクザとの生活を嫌がるも、
良太は柳刃の作る料理のうまさに次第に心を許していく。
 友人たちも素性を偽った柳刃たちと交流し、
その過程で彼の様々な料理とうんちくによって良太と友人たちは少しずつ変わっていく。

 

 

 暮れの就活と抗争事件からそうした良太と柳刃
(それと舎弟の火野) の交流、
様々な料理を通しての彼らの変化が描かれるが、
本作は何よりも様々な家庭でできる本格料理とその知識、
料理にまつわるうんちくが面白い。
皿洗いの基本から始まり、缶ビールは移して飲む方がうまい、
卵は平たいところで割る、種々の香辛料などの知識、
食べるモノによって性格、行動力が変わる、そのためにイイ食材など
興味深い要素が多かった。

 

 

 料理だけではなく、危険な生活をしているからこそ滲み出る
柳刃の深い人間、人生学もまた味わい深い作品です。

 

 
ところで、本作は『侠飯』と書いて『おとこめし』
と読むのですが、これ、読みを変えると
『きょうはん』であり、
ヤクザをかくまった良太の立場をあらわしているようにも取れますね。
面白いタイトル考案だといえるかもしれません。

 


一応ヤクザの抗争の件は本著で解決していて、
柳刃たちの正体も判明しているので
続巻はどういう風に描かれるのか興味があり読んでみたい。

 

 

ちなみに、
本作は2016年にテレビ東京系で実写ドラマ化されているそうです。
主演は柳刃が生瀬勝久
他、柄本時生内田理央など。
ちょっと見てみたい気もしますね。

 


ではまた次の本で。