1046ワークス24口

とーしろさんの趣味よもやま話の通用口。

「読書感想 『ジョジョの奇妙な冒険 STEEL BALL RUN 22巻』荒木飛呂彦」

 

 
 ジャイロの結末にジョニィは絶望するも、彼の最後の言葉であるLesson5の意味を考える。
 この回答が、本作序盤の二人の出逢いのシーンで口にされた
『馬に蹴られて死因が~』が活きてくる。
 これまでの長いレースを通して得られる壮大な遠回りの答え。

 

 これにより放たれた未知なる黄金の回転エネルギー爪弾によって
大統領は地中に埋まり続ける無限地獄へ嵌りかける。
 この回転エネルギーの恐ろしさを思い知った大統領はジョニィに
能力解除の取引を持ちかける。

 

 ここでジョニィは大統領の方が遺体を人々のために正しく扱えるのではないか?
と疑問に思い、そして大統領の取引の材料に心が揺れる。
第1部の主人公、ジョナサンが父ジョースター卿に対して誇りを持ち、
己をを信じたことの対比のように、ジョニィは彼の父を誇りに思えず、
どころか己を信じてここで勝負を決めることすら出来ない自己不信に傾こうとしている。
ジョニィの現代っ子のような自信のなさ、己の行いに胸を張って信じられない弱さ。

 

ジョジョで描かれる『黄金の精神』とは、正義の心であるとともに、
己を信じる強さ、それを困難や自らの迷いや弱さに屈せず成す勇気こそ大切なその精神であるように感じる。

 

次巻、大統領に対して、この勝負と試練にジョニィはどうタスクを放つのか?

 

 ところで、ジャイロの自らを犠牲にしての最後のレッスン。
これについて思うのが、以前シュガーマウンテンが口にした『全てを差し出した者が全てを得る』。

 

 以前、ジャイロを助けるために自らにとって希望である遺体を差し出したジョニィ。
ここで今度はジャイロがその精神を体現し、
自らの命を引き換えにするという行動によって
ジョニィに未知なる黄金の回転を放つという勝利の道を示すことになった。

 

 この自己犠牲をしても他者を活かす――友人であるジョニィを生かし先に進める――
という行動のこころは、
己よりも価値をおく誰かへの労りと愛 (この場合は友愛) だ。
だからジョニィはきっと、この戦いが済んだらジャイロの与えてくれたその思いを胸に感じ、
命を懸けて自分に価値を見い出してくれた友の存在によってそんな己に誇りを持ち、
それは彼の自信とその後に進む力になるだろう。

 

これは、第1部でスピードワゴン
「あの父親の精神は 彼の強い意志となり 誇りとなり 未来となるだろうぜ」
といったように、
ジョースター卿が身を挺して息子ジョナサンを助けて愛を示し、
それがジョナサンの力となったのと同じ。

ジャイロの身を挺した最後のレッスンは、
ジョニィへの誇りの手向けだったのかもしれない。


ではまた次の本で。