1046ワークス24口

とーしろさんの趣味よもやま話の通用口。

「西尾維新・物語シリーズ読破後の総評感想」

※全シリーズ中の内容に触れており、

若干のネタバレも含むため、

物語シリーズを読破した後で読むことをおススメします。

少しくらいならネタバレも構わない、

取り敢えず感想とやらを読ませろや、

という方はどうぞウェルカムです。

 

 

まず、物語シリーズとはどういう内容だったか、

を自分がどう解釈したか、

で語っていきたいということを述べておきます。

 

作品の解釈。

それは、人によっては違う側面を見出して、

異なった読み解き方をされていると取られる記述に

なるかもしれないので、多様な感想のいち意見として、

読んで『こういう意見や見方があるのか、ふーん』

的に思ってもらえれば御の字です。

 

では、いってみましょう。

 

物語シリーズとは……。

 

まず、シリーズ全体を俯瞰して見ると、

物語シリーズ

『正さ』と『間違い』の狭間で、

主人公の阿良々木くんや戦場ヶ原さんや

羽川さんといったキャラ達が、

総じて揺れて、悩みながら決断し、

行動しているということが挙げられます。

 

列挙すると、

阿良々木くんは、瀕死だったとはいえ、

人喰いの吸血鬼怪異を助けることで『間違い』、

それを『正す』ためにキスショットと戦った。

 

羽川さんは、序盤の例では、

自分の正しさのためなら好きでもない異性に体を許そうとした。

 

ガハラさんは、身内のことで抱える重さから逃れるために、

自らズルをするという間違いを犯し、

それを阿良々木くんに間接的に正してもらった。

 

まよいちゃんは人を迷わすという間違わせることをし続け、

それを阿良々木くんの親切心に正された。

 

神原後輩は幼かったとはいえ願いの叶え方を間違い、

その続きとしての阿良々木くんの排除という間違いを、

彼の命がけの闘いで正された。

 

撫子ちゃんはというと、

彼女は怪異に関して被害者だったが、

彼女が無自覚に煽る庇護欲があったとはいえ、

阿良々木くんは撫子ちゃんを助けたいと思わされた。

それ自体は良かったのだが、結果として

それ以外に被害がおよぶことを止められない、

という仕方のなかったカタチの間違いを阿良々木くんは犯した。

阿良々木は被害を出したくなかったが、

撫子ちゃんの存在は、自分だけを助けさせるという

間違いを引き起こさせた。

 

そして『くらやみ』は、

間違った怪異を消滅させることで世の中を正し、

阿良々木くんはそのくらやみに近しい扇ちゃんを

自分の正しさで救う。

 

火憐と月火の妹たちだが、彼女たちは

阿良々木くんと同様であり近しい『正しさ』

をファイヤーシスターズとしての活動で体現している。

 

それは、阿良々木くんが妹たちに危惧し、説いているように、

間違いを孕んだ『不完全な正しさ』であることも作品の中で体現している。

 

同時にそれは阿良々木くんの正しさが

『偽物』の言葉で云われるように完全な正しさではない、

ということをあの妹たちは表わしていて、

それが彼女たちの作品的役目だと考えられる。

 

 

要は、物語シリーズとは

『正さ』と『間違い』の中で、

怪異と関わり、女の子を助けるために行動している。

ざっくりいうとそういうお話だと解釈します。

 

阿良々木くんの行動はというと

 

このように、阿良々木くんはとことんやることで

――困っている女の子を助けたいという行動で――

自分の行いは彼の思う『正しさ』から出たモノでありながら、

『間違っている』『間違った』

ということを突き付けられ続けているんですね。

 

彼はそのことに当然のように悔いを抱いて、

だが、我らが阿良々木暦

それでも誰かを助けることをし続けるんです。

 

間違い続ける自分、その価値に疑いを持ちながら、

(『まよいヘル』でまよいちゃんに

自分が戻ってもいいのかな?と言っていたように)

しかし間違いなら時に人の手も借り、

そうしてどうにか救ってきた女の子たちに、

自らの存在を大切に思われた阿良々木くんは、

自分の気持ちと行動を貫いていますね。

 

 

 

『偽物』の正しさを持っている人間だと自覚しても、

『本物』のように、

それが自分にとっての当たり前だと、

阿良々木くんは自らの正しさを是正することなく、

自信が持てるという訳でなくとも、

それでも誰かを助けることをしていく。

 

自分が正しいと思うことを、

体がそうだと当たり前に動く『したいこと』を、

悔いや葛藤や苦しみがあっても、偽らずに成して行く。

 

物語シリーズは、怪異から救われるストーリーでありながら、

そんな阿良々木くんの苦闘の物語であったとも言えます。

 

つまり、物語シリーズのテーマって?

 

では、物語シリーズ

正しさと間違いの板挟みの道程と

そんな阿良々木くんの苦闘から、

何を言い表そうとしていたのか。

または何が表れているようにとーしろさんは感じ取ったのか。

 

それは、

 

言うならば『信じている』

という言葉で表現できるようなことを

(阿良々木くんのの場合は

誰かを助けるという『正しいこと』を)

 

苦しみに心が曲がりそうになることを

(間違い続けることを)

凌いで、超えて、

『それでもやる』んだよ、と、

 

それが人が自分の望むモノを得たり、望むところに辿り着く、

『幸せになるため』の前提条件として

やらなくちゃいけないことなんだよ、

物語シリーズは示しているのだと思います。

 

斧乃木ちゃんが辛辣に言っていたように、

それに臆病になったり、怠慢であることは、少なくとも

人が幸せになりたいという気持ちがあるのならば、

否定すべきことだ、

と西尾先生は描いているのだと自分は考えます。

 

 

化物語の頭から、阿良々木くんは

おちこぼれで、友達がいなくて、家族とも不和である、

といういささかバッドな、幸せとは言い切れない少年でしたよね。

 

そんな彼がシリーズを通して、

自らの思う行動をし続ける中で、

 

友人が出来て、

恋人が出来て、

妹たちとも不仲を解消できて、

勉強に取り組み恋人と同じ大学を目指せて、

自分の価値に疑問を口にした時も、「そんなことはない」

と味方になってくれる人が出来た。

 

零崎シリーズでも触れていますが(だったと思います。多分)

人間の幸福とは、人間関係で満たされているかどうかである、

と西尾先生によって描かれているので、

まさしく阿良々木くんは

シリーズ中で幸せになってきていたのだと読み取ることが出来ます。

 

それは、阿良々木くんが

怖れず、怯まず、怠慢にながされずに

自分の信じる行動をやり続けたからこそです。

 

間違い、葛藤しながら、そして無様でも自分の信じることを求める。

 

阿良々木くんにとって、それは

信じたい『正しさ』

(困っている人がいたら迷わず助けること)

を行動で成すことであり、

 

それは言うならば、

彼が自分の人生と自己の意義というモノを手放さずに、

時に間違っても、それでも『正しさ』という

自分の当たり前のために『行動し続けること』である。

 

それが『幸せになるため』に必要なことであり、

人はそうしているうちに変わっていって、

そうして変わっていけるんだよ、

と、物語シリーズは書き表わしているように感じてなりません。

 

阿良々木くんにはそれが生の戦いであり、

同時に幸せを求め続ける戦いでもあった、

と描かれていたと思います。

 

戯言シリーズでもそうでしたが、

作中で主人公格は不幸ですが、

しかしそれでもただ不幸のままで居続けることを、

作者も物語中の人物たちも決して由としない。

人は幸せになるために行動しつづけ、

そして変われるのだ、ということを西尾先生は

この物語シリーズでも描いているように受け取れました。

 

人間は幸せになろうという行動を惜しまず、

し続ければ、変われる。

変わって幸せになれる。

 

『正しさ』と『間違い』の狭間で苦闘する少年たちによって、

そんなことが描かれていた。

 

それが物語シリーズのテーマみたいだな、

と自分は読み取った次第です。

 

オフシーズンでは……。

 

早くも第二弾の『業物語』が発売するオフシーズンですが、

愚物語』から始まるこのシリーズでは、

一体どういう物語が描かれるのか。

 

阿良々木くんが主軸となる話ではないのが

『愚』でも分かりますが、

果たして自分が読み解いたような『物語シリーズ

と同種の、または延長線上のお話なのか、どうか?

 

想定すると、

ファイナルシーズンまでで自分の身の上に、

『幸せになる』もしくはそれに近しいカタチの

一定の到達を見なかったヒロインが

ピックアップされているのが『愚物語』だったように感じます。

 

だから、オフシーズンは幸せになりきれなかった、

まだその途上にあるヒロインたちが努力し、変わっていく過程を

描こうとしているのではないか、

ととーしろさんさんは考えます。

 

さて、書き手はあの西尾維新ですからね、

どうなることやら(期待の意味を込めて)。

なので、

それはこれから刊行されていくオフシーズンを追いかけて、

じっくり楽しみ、感想を持ちたいと思います。

 

それは物語シリーズを愛する皆様も同様のことと思います。

楽しみにしていきましょう。

 

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 ©西尾維新/講談社アニプレックス・シャフト

 

 

青春は、読書と感想がつきものだ。

 

僕はキメ顔でそう言った。

 

ではでは~。