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とーしろさんの趣味よもやま話の通用口。

「クラマーへの感謝のカタチ?新川直司先生新作『さよなら私のクラマー』第1巻購入&感想」

というあれで、

今回は四月は君の嘘ですっかり自分の大好きなマンガ家である

新川直司先生の新連載作品、

さよなら私のクラマー』の単行本第1巻の

購入と、読後感想の記事になります。

 

 

さよなら私のクラマー』あらすじ。

 

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 ©新川直司講談社

 

 

 

中学時代、鎬を削った周防すみれと曽志崎緑の二人。

曽志崎が全国レベルの実力者として

雑誌にも名の載るプレイヤーであるのに対して、

周防はチームメイトに恵まれず才能が埋没していた。

 

そのうえ、曽志崎のチームと幾度となく対戦し、

彼女に活躍を阻まれ続けた不遇のプレイヤーだった。

 

そんな周防を敵として認めていた曽志崎は、

周防に「高校では同じチームでサッカーをしよう」

と提案。

二人は同じ蕨青南高校に入学する。

 

しかし、そこはボンクラ監督のもと、

チームは3年生が離反し、

新入生、2年生も含め17名(フルで紅白戦も出来ない!)

とサッカー人生が心配になる環境だった。

 

そんな高校で、新たに赴任してきた

かつての女子サッカーの伝説的プレイヤーをコーチに、

周防や曽志崎、そしてあの恩田希も加わり、

未来の女子サッカーへの希望をも孕んだ

青春×女子×フットボールの物語が始まる。

 

     ☆

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     ☆

 

そんな内容で、1巻はまだ出だしも出だしです。

しかし、後々の展開や、この作品の含む象徴性などは

随所に描かれているように感じました。

 

この辺は、

創作王道ともいえる新川先生の手法が感じられます。

暗喩が暗喩として、伏線が伏線としてちゃんと機能している

安定感のある作風とでもいいますか。

読み取ろうとすると、ちゃんと応えてくれる作りになっている、

そんなマンガを描く作家さんだと思うんですよね。

 

ともあれ、そんな『さよなら私のクラマー』(以下さよクラ)

の1巻を読んだ感想を述べていきたいと思います。

 

 

描きたいのは女子の友情(百合的要素)!?

 

 

 

本作、さよクラですが、

自分はあれは、女子の友情を描きたいのか

(簡単にいうと百合属性モノ)

という印象も受けました。

 

まず、周防やノンちゃんたち蕨高を

全国、果ては女子フットボールの未来を担う場、

代表のステージまで導くクラマーはおそらく能見さんだろう。

 

で、苦難と苦闘のすえそれが達成されるとしたら、

それまでの時間が周防たちに恩師に対する感謝が芽生えさせるだろう。

だが、コーチがいつまででもそのチーム専属とも限らないし、

どちらにしても高校は3年間。いずれは巣立たなくてはいけない。

 

つまり、

有能なコーチとしての能見さんに感謝を抱くまでになっても、

いずれ別れが訪れる。

それが「私のクラマー」とのさよならに当たるのかも。

 

ちなみに、この「クラマー」とは、サッカー選手で、

検索すると現役のクリストフ・クラマーと

かつての日本のコーチでもあったデットマール・クラマー

が出てきます。

 

本作『さよなら私のクラマー』のクラマーは、

まず立てる推測として、

恐らく昨年逝去した後者の、

指導者としてのクラマーであると推測します。

デットマール・クラマーWikipedia

 

 

指導者としての能見さん≒私のクラマー

との別れの(悪い意味ではなく、巣立ちとしての)物語。

 

チームメイトとして苦楽を共にすることで、

周防の周りの曽志崎やノンちゃんたちチームメイトには

絆が生じることでしょう。

 

そして、それ意外にも、女性の恩師(私のクラマー)との絆が生じている。

 

ひとりぼっちだった女子フットボーラ―同士が響き合い、

その場と機会を高いステージに導くことで与えてくれたクラマーに、

周防たちは感謝と強い繋がりを見い出すに至る。

 

これが女子同士の絆の物語でなくてなんなのか!

(いや、熱血&新川先生的フェイバリットフットボール漫画だろうに)

 

それがさよクラなのかな……という気がしています。

 

 

もう一人のクラマー。つまり「私のクラマー」とは誰のことか?

 

 

作品の様相を想像したうえで、ここでもう少し、

クリストフ・クラマーの方にも注目してみましょう。

 

まずは、この経歴などを読んでください。

クリストフ・クラマーWikipedia

 

 

読んで頂けましたか?

ここでいくつか気になることがあります。

このクラマーは存命ですが、

既にこの「さよなら~」シリーズに、

クリストフ・クラマーの経歴や情報と重なる選手がいます。

 

お気づきでしょうか。

そう、恩田希ことノンちゃんは、

試合中に脳震盪を起こし、

今が試合中であるという記憶を失ったという描写が

さよならフットボール』の2巻であります。

 

そして、クリストフ・クラマーの背番号は「6」。

さよクラでのノンちゃんの最初の背番号も「6」。

 

この符合は、恩田希が周防にとっての「私のクラマー」

になることを示唆している可能性もあります。

 

しかし、新川先生の前作、

四月は君の嘘』をちゃんと知っている方は

ここで気付くかもしれません。

 

ナンバー4、の存在に。

 

そう、君嘘でかをりちゃんは最初の演奏が4番目でした。

そして、さよクラでの背番号4は、

1巻の時点では……曽志崎なのです。

 

これはもしかしたら、

周防にとってのクラマーは曽志崎になり、

彼女との何らかの別離

(故障かもしれませんし、現時点ではなんとも言えませんが)

をすることになる、という物語の線も考えられるのです。

 

そうだったとしたら、

「一人になんかさせないから」

と最初に語りかけた曽志崎との別離を超えて、

周防がフットボールを続けていく……

そういう展開さえも想像されます(胸熱!)

 

これは、誰が「私のクラマー」であるのか、

その焦点によって物語が変わってくると言えます。

現時点では、情報が多くもあり、少なくもあります。

 

まだまだ始まったばかりのストーリー。

そこには豊かな可能性があり、

先の展開に心踊る思いでいっぱいですね。

 

 

さよクラ、今後の注目点。

 

 

自分が思うに、この「私のクラマー」が誰かは、

今後デットマールなり、クリストフなりの

ウィキに載っている情報なりと

“符合する行動を誰かがするか”

これが見極めるポイントになると考えています。

 

クリストフの人物、プレイスタイルの欄でも、

恩田たちが日常風景でしそうなことが書いてあったりします。

今後は、ノンちゃんや曽志崎、能見さんの

生活シーンに目を光らせるべきかもしれないのです。

 

それによって、「私のクラマー」が浮き彫りになるかもしれません。

 

しかし、表題の意味から展開を予想するような

物語を純粋に追うこと以外の楽しみ方を邪推ととる方は、

この記事の内容は忘れてください。

 

自分は、創作的観点(書き手として構造を読み解く観点)から

考察しようとしている派なので、

合わない人には合わないと思うので。

そこはこの記事を楽しめる方が楽しめれば、と思って書いております。

 

 

 

さよクラに思いを馳せる。

 

 

色々言いましたが

そして同時に、これは下剋上と希望の物語であると思うのです。

出っ端にがつんと手痛い敗北を味わい、

そこから個性的な周防たちが伸びていき、

頂点に至るかはともかく(全国ベスト8あたりかも)

女子フットボールの次代の星の輝きを担う者たちとなる。

 

そうしてこそ、

現代日本サッカーの恩人クラマーに対して、

我々は全力の敬意をもって別れを告げられるだろうと思うのです。

日本のフットボールの火は大丈夫だと、そうクラマーに哀悼の意を表する。

それが女子サッカーを舞台に描かれようとしているのかも。

 

これはすなわち、

新川先生なりのクラマーへの感謝と日本サッカーへの

エールの漫画になるような気がしているのでした。

 

そんなわけで、

この作品でみせる女子サッカーの未来というヤツを、

そして周防やノンちゃん(曽志崎たちも)

が辿り着く高校女子サッカーを楽しみにさせていただきましょう!^^

 

2巻も要ちぇき!ですね!

ぐう正論。