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「映画『デジモンアドベンチャーtri.』第4章「喪失」感想。1~6章全編視聴完走後の感想④」

 


デジモンアドベンチャーtri.の第4章の視聴感想になります。
お付き合いいただければ幸いです。

 

4章。

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 © 本郷あきよし東映アニメーション

 

 

リブートにより別れ、再起動したというデジタルワールドに向かう
選ばれし子供たち。
大人になるまで、いつか、とか言っていて
パートナーデジモンとの絆が風化してしまう前に会いに行く。

 

姫川の手でデジタルワールドに渡った太一たちだが、
その中に芽心の姿はなかった。
メイクーモンの行いに衝撃を受けて、どうすればいいか戸惑い悩んでいるようです。

 

デジタルワールドに到着した子供たちは、
探索するなかで幼年期のかつてのパートナーデジモンたちと遭遇。
感動する彼らだが、デジモンたちは知らない人間に戸惑い警戒している。
やはりリブートによってデジモンたちの記憶は失われており、
太一たちと育んだ記憶や絆はなかった。

 

けれどリブートをしてもヒカリのパートナーデジモンのテイルモン(の幼年期)が
彼女の残したホイッスルを持っており、
(これは何故再編された世界に残っていたのかはよく分かりません。
想像ですが、
デジモン個体に紐付け、リンクされたアイテムなどが引き継がれたのでしょうか?

 

それとも、ホメオスタシスの依り代ともなったヒカリへの、
デジタルワールド運営の何らかの配慮でしょうか)

 

その笛とヒカリの匂いから
二人は割とすぐに打ち解ける。
タケルとパタモン(の幼年期)も割とすぐに仲良くなる辺り、
末っ子勢の人とうまくやる能力が現れているとも思います。

 

アグモンと太一、ガブモンとヤマトもややぎこちない様子をみせながら距離を縮めています。
けれどそのなかで、
ピヨモンは異様に警戒心と不信感が強くて空のことを拒絶している。
もう空大好きっ子だったあのピヨモンが……
空の様子はさながら仲の良かった母子が反抗期で困惑しく悲しんでいるようでもありました。
(もちろん空が母)

 

実際、4章は空とピヨモンの回ともいえて、
パートナーデジモンと再会は出来たが、
その様子にショックを受けて悩む空とツンツンしているピヨモンの様子が描かれます。

 

同時進行で、一同の前にメイクーモンが出現。
けれど彼女は芽心のことを探して泣いていて、彼女の記憶を失っていない。
リブートをしたのに何故メイクーモンだけが……?
少し前から歪みの原因であったり、
メイクーモンの本質、他のデジモンとは異質な様子がここでも描かれます。

 

見た目は可愛い猫っぽいのですが……
内面に闇を抱えているタイプなのでしょうか。
デジモンでもそういう複雑なメンタルになるというよりも、
デジタルの存在としての性質がそうさせるのか……?

 

空が悩んでいるところに様子を見に来るのが、
太一とヤマトの二人とも、
というのが選ばれし子供たちのつながりであり、
彼ら彼女らの関係性が表れています。

 

でも二人とも、こういうときに女性にかけるべき言葉については
どうしたらいいか困惑していましたね。

 

アドバイスよりも、心境を聞いてやるだけでも良いと思うのですが……、
それで少し気が楽になったら、
今の現実の問題に向き合いながら、
ピヨモンとのこともなんとか少しずつすり寄せていくのではないかと、
空はしっかり者タイプだからそんな想像をします。

 

そうした空とピヨモンの二人は、
敵ムゲンドラモンの襲撃のさいに生じた歪みによって
他のメンバーと分断され飛ばされ、
砂漠でデジタルワールドにおくれてやってきた芽心と出会う。

 

やはりメイクーモンのことが気がかりで、
放ってはおけずに彼女もデジタルワールドに会いに来た様子。
太一たちもメイクーモンが芽心を憶えているなら絆を修復してやりたいと見解を一致している。

 

一方、リブートの目的が自身のかつてのパートナーデジモンとの再会にもあった姫川は、
新生したデジタルワールドでバクモンと再開。
しかし姫川のことを憶えていないことに彼女はショックを受ける。

 

子供のころか沢山勉強して頑張ってきたのは、
バクモンと再会するためだった彼女にしてみればこの拒絶はかなりの痛手でしょう……、

仲良く、冒険で苦楽をともにしたパートナーデジモン
久しぶりに会ったら「あんた誰?」では、
誰でもそうなるというか。

 

本作tri.のリブートによるパートナーデジモンとの絆のリセット、喪失は、
そういう厳しい現実がありますが、
同時に長期コンテンツを目指すうえでの(キャストやアーティスの喪失といううえででもですが)
新陳代謝として必要な断捨離というか、
切り捨てる作業にも取り組んでいるように思います。

 

言ってみると、刷新された『デジモン』コンテンツに拒絶反応を示すファンは
姫川さんのようになり、
生まれ変わったデジモンたちと絆を育んでくれるファンと、
新規のファンを求めるという制作側の密かな意図を感じます。

老害化して「わしらは昔から知っているコアなファンだ!最近のにわかはw」
という風に横柄な言動をし、
昔の作品が(初代デジモンアドベンチャーが)至高だと声高に言われまくっても、
それは制作側としてはちょっと困りものですし……。

 

本作『tri.』はそういう新陳代謝の変わり目、過渡期の挑戦的な作品であるとも
いえるかもしれません。

 

一乗寺賢やゲンナイの姿(アバター)で表れる謎の男の襲撃に
作戦を練り抗戦する太一たち。

しかし、陽動を軽く見抜き嘲笑するあたり、狡猾な人間性が表れているように感じます。

 

この闘いで一気にアグモンたちはウォーグレイモン、メタルガルルモンの究極体に進化。
この辺は……確かに初期レベルで勝てる相手ではないから
そうならないと困るのもありますが、
TV版1年シリーズで積み重ねてそこまで至った境地を、
リセットして割とすぐにまた再現できる、
というのは、やや困惑するというか、さがる面もあるというか……、

 

TV版の選ばれし子供たちを追って視聴して積み重ねた視聴者、ファンは
その思い出を裏切られたと感じてしまう面もあるかもしれません。

 

そういう意味もひとつ、本作が物議ある理由かもしれません。

 

(あと、メイクーモンの処遇がどうなるか……)

 

闘いの最中で空が偽ゲンナイに暴行を受けそうになり
(このへんで空の反応が、偽ゲンナイに性的なことをされそうで恐怖したのか
か細くなるあたり、
彼女もしっかりしているけれど普通の女の子なのだと感じる演技でした。
ただ単に物理的に圧迫されて息苦しかったという解釈違いの可能性もありますが)

 

空がピンチでもピヨモンを優先して体を張って気遣ってくれることで、
ピヨモンにも空への愛情が芽生え、
二人の絆も復活。

 

ピヨモンも究極進化を果たす。
同時にこの戦闘ではパタモンとテントモンも
究極体に進化。
この時の子供たちの様子は、リブートによるパートナーデジモンの記憶の喪失への
悲壮感がなかったかのようで、
この辺は解釈が分かれそうです。
軽いと取るか、
救いととるか。

 

TV版から究極進化をしていないのは、あとはテイルモンのみ。

 

ただ、戦闘後に光子郎が
「絆はあったんですね」と
口にしように、
リブートによる記憶のリセットはあっても、
進化の強い因子であるパートナーとの絆は
そのデジタル存在の遺伝子のなかに保存されていたのかもしれません。

 

これは、デジモン作品がリセットされて、
初代の思い出が壊されたとしても、
古くからのデジモンファンとデジモンのあいだにも絆がのこっていて欲しい、
という制作側の願いかもしれない、
と好意的にとることもできるかもしれません。

 

では、許容できず過去にこだわるファンはどうなるのか……
それは今後の姫川さんの様子で描かれそうです。

 

偽ゲンナイの仕掛けたメタルシードラモンとムゲンドラモンを撃退した子供たちだが、
芽心を苦しめる偽ゲンナイにメイクーモンが暴走。
その性質を、メイクーモンは世界にとっネガティブな存在であると否定的なことを言う。

 

この辺は、彼の悪意がにじみ出ているように思う。
存在の否定は、善意である肯定とは真逆であるし。
偽ゲンナイは悪意によって追い込み、誘導し、メイクーモンの性質を利用して
自分側の利益に利用しようという、よくある悪意を感じる。

 

それはデジタルワールドへの悪意か、
その秩序を守るホメオスタシスへの悪意か、
それともデジモンを使役しているとみる彼の人間への悪意か。
うわべで綺麗事を良い、裏では利益のために欺瞞と策略でだまして
利益を得るのを当然としている社会と人間の本質
(の一面であり、偽ゲンナイはそれを人間と世界のすべて、100%と思っているのかも)
への悪意か。

 

絆を結んだ大切なメイクーモンを否定され、
信じようと実際にデジタルワールドにやってきた芽心の目の前で、
人間世界であれだけ被害を出した暴走をまたしてもしてしまうメイクーモンに、
芽心はまたも傷ついていますが、
このパートナーたちは大丈夫なのか……というのも本作の見所かもしれません。

 

その悪意の偽ゲンナイの高笑いと共に次回へ。
暴走するメイクーモンによる混乱と、
偽ゲンナイの悪意の暗躍による危機は必至。

長くなりましたが、今回はここらで。
次回の5章の感想でまた。

 

ではでは~。