1046ワークス24口

とーしろさんの趣味よもやま話の通用口。

「『ガンダムビルドダイバーズRe:RISE』20話で感じた作品の狙いについて」


今回は、ガンダムシリーズ最新作、
ガンダムビルドダイバーズRe:RISE(リライズ)』について
書かせていただきます。

 

このリライズはビルドダイバーズの2作目。
ガンプラバトルをプラモではなくデジタルのGBNという仮想世界で行うようになって、
GBN内でのキャラたちのガンプラバトルが描かれるのですが、
リライズは1クール目は
仮想世界と思っていたら
どこか別の世界(星)に飛ばされていて、
その際にガンプラは実物と化して本当に現地民(けも耳人間)を守って戦闘をすることに。
その別の星での戦闘でしくじり、再度現地民を守るために
もう一度向かって、主人公のヒロトは初期からなにやら抱えていたトラウマを
一応乗り越えるるのですが、
そこからの彼のGBN内での過去エピソードが19話、20話で描かれました。

 

特に20話は誰かのアバターと思っていたイブの正体と、
彼女をGBN世界を維持するために消し去らなければならないという辛い選択を迫られる。

 

ヒロトの機体に、そして彼の能力的にイブを救う手立てはなく……

 

f:id:itotetsu241046:20200727214954p:plain

 ©創通・サンライズ ©創通・サンライズテレビ東京

 

その反面、1期の主人公はイブがヒロトに守ってくれと言い残した
彼女の妹を(イブと同じ存在で、イブと同じ運命をたどるはずだったのに)
救ってみせ、ヒロトは深い絶望と苦しみに沈む……と、
気になった方は是非、今からでもビルドダイバーズRe:RISEを視聴してみてください。

 

そのエピソードの描写があったうえで、本題はここからです。

 

ガンダム世界を守る代償……?

 

イブとヒロトのシーンで感じたことを書かせていただきます。
イブはGBN、つまり『ガンダム世界』を守るために消えなくてはならなかった。
ヒロトにとってはもう大切な存在で、守るべき人、『守るべき愛しい姿』です。
けれど、ガンダム世界を守るためにその大切な存在を破壊しなくてはならなかった。

 

これについて思うのが、
意味合いとして、制作側が(AGEなどの批判を受けて)ガンダムを守るために
作品の守るべき何かを破壊せざるを得なかった、
ということかもしれない、ということ。

 

その大切なモノとは、
ビルドファイターズの成功で、ファンサービスとプラモ玩具販促の面もあった
ガンプラバトルが幅を広げて、
ガンダム本来の、根幹である
機動兵器と戦争の物語を破壊した、ということだと思うのです。

 

同時にこれはマーケティングの面から、
ガンダム存続のために愛すべき姿を破壊することに、
暗にファンが同意を示した、ということでもあります。

 

だって、ガンダムというロボットで
キャラがよくてバトルが熱ければ、本来の戦争の話じゃなくても
喜ぶわけですから。
作品が良かっただけという見方もありますが、
けれど結果としてファンも、クリエイター側もガンダムの本来性を破壊して
その後の作品を展開していくことを
ビルドファイターズで許容する形になったわけです
(実際、(おそらく)戦争モノのガンダム続編よりもガンプラバトル系の方が
制作されています、地上波TV版ではこの5年)

 

こういうことは平成ガンダム(とくに『G』)でもあったのですが、
90年代は『W』『X』『ターンエー』で戦争モノのあり方はなんとか続いていて、
今回は変化の度合いがやや違います。

 

そうして変わったガンダムの新たなヒロイン、仮想世界の存在であるメイが、
新たなガンダム主人公ヒロトの悲しみに寄り添い、慰めたのは、
ある種、制作側が一応の変化の自己肯定をしたようにも受け取れます。

 

このシーンで、リアルの人間たち(カザミたち)は
ガンダム世界の核となるヒロトたち人物(ガンダムそのもの)を傍観しています。

 

リアルの人間=ファン
ファンはガンダムの変化とその制作者自身の許容を見守るしかなかった、
という構図がこの20話の一連のシーンと、
そしてリライズを通して表現がなされてきたと感じました。

 

でも、リライズはそれでガンプラバトルにシフトするのを完了するお話でもないと思うのです。
なぜなら、本作は本来ガンプラバトルモノなのに、
別の星で戦争をしています。
地球人ではなくけも耳人間ですが、実際に人命が失われて悲しむ人々をまえに
ヒロトたちも苦しみ、守るために再度立ち上がったわけです。

 

これは、リライズではガンダム本来の、根幹の
機動兵器と戦争への回帰も示している、ということになります。

 

というか、いってしまうとより正確には、作中のメインワードでもある
リライズ(回帰) とコアチェンジ(核の変更) が本作の狙いだと思います。

 

どういうことかというと、本作の全体と、最終回後の視聴者、ファンの反応によって、
ガンプラバトル路線へのコアチェンジを肯定するか?
それとも、
ガンダム本来、根幹の機動兵器と戦争の物語へとリライズするか?
ガンダムファンに問いかけている作りになっているのでは、と。

 

20話のイブとヒロトガンダム世界を守るために彼女を……
というシーンからそう感じたのです。

 

それに、この考え方に則ると、
2クールOP曲の歌詞、


『何のために捨てたんだ 疑え ぼくをやめないように』

HATENA 
歌手 PENGUIN RESEARCH

というフレーズ、その意味に重みが増すと思うのです。

 

ぼく=ガンダム
です。

 

この考え方はあくまで想像ですが、
けれどマーケティングの面ではありそうでもあるんですよね。
よりどちらをファンが望んでいるのか?
今後のガンダムはどうあるべきなのか?
制作側もそういうことは悩んでいると思います。
人気のビッグタイトルだから安泰で同じペースで、スタンスで作り続ける、
ではだめなのです。
古い伝統のあるモノはすべて、
新陳代謝をして、つねに同じであり続けるように変わり続けないと
成立しないのです。
でないと、ブランド力ばかり肥大して古めかしい、新規はとっつきにくい、
固定ファンしかよりつかない、
つまり先細りしていずれなくなる、というながれになります。

 

だからつねに新陳代謝が必要になり、
けれどそれがときに方向を誤り、大きく間違った転換をして自滅、
ということも歴史は示しています。
多くの老舗と呼ばれる存在は、この新陳代謝を果敢に取り入れて成功することで
長い歴史とそれでも古びない質と信頼を維持しているのです。
それはすでに40年の歴史のあるガンダムも同じように迫られることで、
(というか、これまでも迫られて取り組んできたと思います)
神の域にあるトップクリエイターの富野監督をはじめ、
猛者のひしめくガンダム制作陣はちゃんと分かっていることと思います。

 

このビルドダイバーズRe:RISEはそういう表現、意図が仕込まれていそうで、
だからこそ、ある種当たり前でもあるのですが、
本作中と、最終回後の反応は大切にした方が良いと、
そう思うのです。

 

これが本当なら、本作は今後のガンダムのある分岐点となるかも
しれないのですから。

 

今回は、少し時間が空きましたが、
ガンダムビルドダイバーズRe:RISE(リライズ)20話から
あまりに20話の内容が濃かったので長い目になりましたが
個人的に考えたことを書かせていただきました。

 

何かの足しになれば幸いです。
ではでは~。