それまでの裕福な生活や家族を捨てて
厳しい環境で絵を描くことを選んだストリックランドは、
晩年をタヒチで過ごしたゴーギャンがモデルになっているそう。
本作はストリックランド(ゴーギャン)の絵にかけた人生を
彼の知人の作家の視点で追想している物語。
語り部の読解力が高く、様々なことへの深い洞察、教訓が多々見られた点は、
今ならば納得いくことや、
なるほどと勉強させらる示唆に富んだモノがいくつも書かれていた。
そんな作家からみてもストリックランドの絵への情熱は不可解で
彼の動機、何を求めていたかがストリックランドを知る様々な人たちの言葉と
併せて提示される。
ストリックランド自体は、それまでの人生で豊かさも女も十分で、
中年を過ぎて焼き焦がれるように絵以外に興味はなく、
すさんだ生活でも絵さえ描ければいいという様子。
彼の才能を見抜いた友人の画家の善意に対しても辛辣で身勝手で、
結果この画家はストリックランドの才能に巻き込まれ不幸にされている。
それでもひたすら絵を描き続けたストリックランドは
遠くタヒチに渡っての晩年の一時期、
彼の幸せと絵が完成されていて、
画家ゴーギャンの人生を違った角度で追う物語としても面白い。
ストリックランドの絵へのスタンスは語り部によって、
これは本当の幸せとは何か?の追求の面もあったと思われ、
月は絵と理想という夢、六ペンスは現実的な裕福さという意味に捉えられ、
ラストは両者が対比して描かれ、『読者にとっての幸せは何か?』
という問いかけにもなったように思う。
強烈な情熱のままに生きた画家人生に触れる他にも学び、考えさせられる本だった。
ではまた次の本の感想で。