1046ワークス24口

とーしろさんの趣味よもやま話の通用口。

「荒波も何のその。今期アニメ『波よ聞いてくれ』視聴完走、の感想」


波よ聞いてくれ
今期放送されたアニメで、
無限の住人』などで知られる沙村広明先生の漫画のアニメ化作品です。

f:id:itotetsu241046:20200628190716j:plain

 ©沙村広明講談社

 

あらすじは、
北海道は札幌のスープカレー屋に勤める独身女性、鼓田ミナレが
彼氏に金をだまし取られた愚痴を飲み屋で相席した
ラジオ業界の男性にしたことをきっかけに、
ラジオパーソナリティーとなって奮闘していく物語です。

 

本作のアニメ化に際して、自分は原作をノーチェックだったのですが、
Twitterで回ってきた公式PVで、
いきなり羆と対峙しながらラジオを放送しているミナレの様子に
これは面白そう!と感じて視聴してみました。

 


TVアニメ『波よ聞いてくれ』第1弾PV

 

危機的な状況から始まるラジオ放送という突飛な掴みですが、
見始めてみると
ミナレがダメンズとの問題を抱える他にも仕事先でも
どうもこの女もダメな奴感をぷんぷん匂わせていて、
彼女の周囲にもちょっとダメな人たちがたくさんいる感じです。

 

仕事先のスープカレー屋のスタッフとか、
部屋の隣人とか、
彼女の父親もかなりダメ人間っぽいです。

 

ラジオパーソナリティーとして深夜のラジオを始めてからは、
リスナーや企画の訪問先の人間もどこか問題のある人間で、
本作は彼らと、そしてミナレ自身を彼女のラジオを通して
少し前向きにしていくような側面もあると感じました。

 

人生の問題の数々という荒波に立ち向かってく、
そんなパートナーとしてのラジオを表現しているとでもいいますか。
ラジオは虚業
という表現も作中でされますが、
人間大抵は欠点、問題を抱えていて人生に辛さや苦しみはあるものです。
それを音楽や映画、エンタメといった娯楽で緩和しながら
自らの勤めと生活を営んでいく。
ラジオもそのひとつの癒やしなのだと、そう
本作のエピソードを通して改めて感じさせられます。

 

ただ、説教くさいなんてことはなく基本ギャグテイストで、
例えば
ミナレは同居することになった同ラジオ局の若手女性の瑞穂ちゃんの純粋さに、
ときに癒やされ、ときに自分のダメさを自覚し、
そして性転換して彼女を幸せにしよう、
とか現状をおっぽってふざけたことをモノローグする始末です。
ギャグのセンスがこの漫画さん独特で、
ミナレもザ・沙村女性の一タイプという感じ笑えることしきりです。

 

キャラについて触れると、
種類というか、役割もしっかりしていて、
はっちゃけたお姉さんポジのミナレと、
癒やし女子の瑞穂、
クール担当の同局のプロパーソナリティーのまどか、
不幸担当のマキエ、
おっさん枠のミナレをラジオの世界に引き込んだラジオディレクターの麻藤、
ギャグ、色モノポジのカレー屋の店長などなど。

 

作劇ニュアンスが分かりやすくてすんなりと
ミナレの破天荒でふざけた様子を楽しめます(つっこみをいれながら)

 

作劇でいうと、
ストーリーのながれは仕事の他にも
ミナレから金をだまし取った彼氏への復讐劇でもあります。
沙村先生作品は『無限の住人』も『おひっこし』も
ヴェンデッタ(復讐)が基本にあるのがお約束のようで、
それが本作でも守られている安心感(へんな安心感ですが)があります。

 

またミナレの名前の由来が謎として提示され、
加えて麻藤がミナレの声に惚れ込んだ理由としてあがる、
かつて存在した女芸人、シセル光明。
彼女と麻藤の関係、彼女とミナレのつながりなども気になる要素です。
アニメ全12話ではほのめかすくらいの表現で、
明示はされていないあたりに本作の謎が視聴後ものこります。
原作漫画はまだ連載中で(現在7巻まで発売中)このへんの謎が描かれたかは
原作未読のため定かではありません。
アニメを視聴して気になった方は原作を追うのも良いですね。

 

他には、最終話の展開です。
ミナレがラジオパーソナリティーとして本格始動していくと思われた矢先、
北海道のあの事件が起こるわけです。
これはあまりにふざけた話ばかりしているので、
油断していて不意をつかれて驚きました。

 

この事件を作中で描くことは、連載開始時期を考えると
企画当初にはなかったことだと考えられ、
この事件を受けて描くことで冒頭の羆との危機的状況とつなげる形になったのですが、
本来ならここまで時事的なことは
近い時系列では描くのは自粛するところだと思います。
それを踏み切った英断を感じますし、
これによってダメ人間でありながら、
「それでもただ挽回したい!」
とラジオ中でも叫んだミナレのへこたれなさを十分すぎるほど表現することになり、
評価が高まるポイントだと個人的に思っています。

 

いや、12話で一気に面白い作品だったと強く思わされました。

 

また、そういう表現に踏み切ったからこそ、
本作が完結までいった際の評価も注目が集まると思われます。
こんなことをしていて大ゴケしたじゃあ格好がつかないですし、
沙村先生の今後にも影響があるかもしれません。
そういう意味で、この事件後のミナレたち藻岩山ラジオ局の面々の動向も含めて、
本作は今後も注目していきたい作品となりました。

 

今期、注目していた『波よ聞いてくれ』を視聴して、
自分はそんな満足感と期待感を抱きました。
他の視聴したみなさんはどうでしたでしょうか。

 

今回はそんなアニメ『波よ聞いてくれ』を視聴した感想を
書かせていただきました。

 

ではでは~。