割と裕福で作家だったり爵位があったりで自由に暮らせるフランスの若者たちの享楽の日常、
スペインに旅行して祭と闘牛を見て恋もあり、という内容だが、
その享楽はジェイクにとってもブレットにとっても
どうしようもないことへの満たされなさを薄める面もあったのだろう。
本作は現代的にみるとあまり起伏に富んだ内容でもないのだが、
ジェイクたちの様子を描いているだけで、
直接感情を言葉で訴えてはほぼいないにも関わらず
彼らが享楽にふける虚無感や焦燥、満たされなさが伝わってくる。
鱒釣りに向かう際の自然の様子からも、
観察眼とそれを文章で表すということがとても丁寧にされおり、
ああ、こういうのを文学というのか、と再認識させらた本だった。
自己の視点と表現で世界の事象や概念を書き表す、
それが文学ではないのか、
という自分なりの納得を感じられた読書だった。
ではまた次の本の感想で。