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とーしろさんの趣味よもやま話の通用口。

「コードギアス『亡国のアキト』第4章「憎しみの記憶から」鑑賞・感想」


コードギアスシリーズの外伝、
『亡国のアキト』の第4章を鑑賞した感想になります。
お付き合いいただけると幸いです。

 

アキトたちは
E.U.内上空で市民に不安を与え暴動を引き起こしている原因である『方舟』への
降下突入作戦を開始。

 

方舟に無事到着するも、その構造がハリボテのようにスカスカで、
内部では敵機が多数待ち構えていて戦闘になる。
敵はワイヴァン隊も使用した無人機、ドローンと、
部下ヨハネの敵討ちに燃えるアシュレイが凶悪な新型機で襲い掛かる。

 

この辺りは、軍師ジュリアス・キングスレイの策の一環で、
ワイヴァン隊、すなわち『ハンニバルの亡霊』を誘い出し撃破、
ないし方舟とともに始末する算段だったのでは、と思います。
(語られていたかもしれませんが覚えていません)

 

戦闘中、レイラ達の基地指令室にはE.U.のスマイラス将軍から通信が。
これによってレイラは暴動をする民衆を鎮めるために訴えかける役目を、
かつての彼女の父の名の力を使って実行する。

 

E.U.全域への通信により、
フランス、パリでの暴動をする市民にもレイラの言葉が伝えられる。
その内容はレイラたちがユーロブリタニアと戦う部隊の人間であり、
その兵はE.U.の市民がブリタニアへの不安から隔離差別している日本人ということ。
彼らの犠牲を見過ごして戦争をすることは、
ブリタニアの強大さに半ば支配されているも同じだといえます。
だからこそレイラは人道的立場以上に、自分たちの自由のために
そんな戦争をしていてはならないと訴えます。

 

うーん、親日家や日本アニメのファンの多いパリでこの訴えは、
フランスの人たちはどう思ったでしょうか。
その通りだとレイラに共感してくれたのでしょうか。

 

この演説は
E.U.市民への叱咤とブリタニアの策への怖れの払拭、
それにレイラの大切な仲間たちを無駄死にさせない願いなどのさまざまな
意味合いが込められていると感じます。
レイラの人道精神、優しさや他者へのいたわり、
そしてその希望への真摯さがよく表れています。

 

けれどこの演説と同時進行で描かれる方舟内の
アキトたちとアシュレイの戦いは、
殺意満点のアシュレイの攻撃にアキトにかけられたギアスが浮上し、
互いに殺し合いが激化します。

 

さなかにはワイヴァン隊の面々の意識が繋がるBRSがまたしても起動。

 

KMFのアシュレイ機のコクピットを両断し、
生身をさらしたアシュレイをアキト機は手で握りつぶそうとしますが、
BRSを通してリョウたちがアキトを諫め、
アシュレイを殺すのを止めさせる。
この時の仲間の言葉でアキトの目のギアスの赤い輪郭が消失しますが、
これで殺意がなくなったあたり、
シンのギアスの呪縛から解放されたと見てもいいのでしょうか。

 

その後に、アシュレイに対して自身も生身をさらすアキトに、
アシュレイは結果的にこちらもアキトを殺さないことになる。
同時に、E.U.へメッセージを伝えていたレイラを称える市民の声があがる。

 

この辺は、憎しみなどのネガティブな感情に支配されている
E.U.の人々とアキト、それにアシュレイにも
レイラとリョウたちの想いが届いたかのようです。
レイラの言う自由とは、境遇的な自由以上に
他者を害する卑劣さや愚かさに囚われていることからの解放の自由なのでしょう。

 

これはアキトの態度と言葉によって
アシュレイも憎しみから自由になったシーンといえますが、
アシュレイはブリタニアの兵である自分を殺してもいいところを生かすアキトに、
仇を討とうとして殺意しかなかった自分の小ささや、
仇を討ちたいなら討てと、自分が相手を殺すよりもその方がいい、
とでも言うかのように生身を晒すアキトの強さを感じたのかもしれません。

 

このアキトの気持ちは、リョウたちの説得にもあった、
誰かを殺すと巡って自分(の心や未来)を殺すことになる、
ということで、
他者の命を奪うとは、互いにそうやって自分を殺すことになる、
悲しく誰のためにもならない良くないことだ、
ということが分かり、
これまで戦争と自己の生き残りのためがあったとはいえ
多くのブリタニアの兵を殺めてきた立場としての償い、懺悔の意味もあったのでしょう。

 

そこでアキトを撃ってしまえていたら、懺悔している者を無慈悲に撃ったことにもなり、
アシュレイはその程度の人間としてずっと日向アキトという人間に負い目を感じて生きていくかもしれない。
ヨハネの敵という名分はあっても、
今生きて目の前にいる人間同士としてアキトに対したとき、
アシュレイはそんなアキトを撃つかどうか葛藤した。

 

結果、撃てないことになって運が悪かったのか、良かったのか。
登場してからロシアンルーレットをして人間には運が必要と説いていたアシュレイが、
ここで運について考えるのは、
アキトを撃つことがロシアンルーレットの負けに相当したのかもしれません。
撃ったらアシュレイも自分を殺すことになっていたかもしれない。

 

そんなアシュレイはこの後どうなるのか?
ワイヴァン隊に拘束されるのか?
ブリタニアの兵としてはどうなるのか?

 

方舟での戦闘がいったん片付いたと思った矢先、
方舟にセットされた爆弾によって
アキトたちの反応がロスト。
レイラをはじめ司令部の面々は激しく動揺する。

 

え、いやこれでアキト含め全滅ということは
まあないとは思いますが……。

 

ジョーワイズが涙していたり、
博士が腕を組んで守りの姿勢になったり、
ワイヴァン隊全滅か?と思われレイラも崩れ落ちるが、
そこにシンの部隊が城に接近。
失意のレイラに普段はやる気を見せないウォリックが彼女に檄を飛ばすシーンは、
窮状だからこそ誰かが司令官を立て直さないとならないと、
彼も奮起したのかと思わされます。
普段やる気のない彼が熱い姿勢を見せることで、
全員で生き残ることの本気度と熱意が伝わったのかもしれません。
レイラは復帰して城基地周辺に防壁を展開して
シンたちの部隊の進行を一時とどめることに成功。

 

長期戦になるのでいったんメンバーの何人かは休憩に。
そこでアキトの死を思いレイラは悲しみますが、
事態はスマイラスの裏切りでレイラは死んだことにされ、
スマイラスがE.U.を掌握するための駒とされる。
そこでウォリックの提案でワイヴァン隊の情報を材料にレイラたちは
シンたちブリタニアに降伏する交渉に入る。

 

アキトもワイヴァン隊のみなも失い、
後ろ盾のスマイラスとの繋がりもなくなり、
孤立無援で城のみなを守るためには選択肢はなかったかもしれません。

 

E.U.はスマイラスによる民の扇動で戦争に本腰を入れそうな気配。
レイラを裏切り、市民を戦いにいざなうのも
管理者との約束でシンを倒すためなのでしょう。

 

管理者がシンを消すことを望む理由とはなんだったのか?
その辺は、シンのギアスつながりなのかもしれないと感じます。
どうもシンのギアスってC.C.とか繋がりではない
ちょっと違う雰囲気がありますので。
管理者にとってはシンのギアスは何等かの問題があるのかもしれない?
と少し思います。

 

シンとジャンたちとの交渉に臨むレイラとウォリック。
ここでのやり取りでは人間に失望して見下すシンと、
アキトの生存と、信じるということの大切を毅然と示すレイラの対比で、
戦争を望む者と和解、共存を望む者の対立が描かれますね。
コードギアス本編同様、これが本作の一番のお題だったのかもしれません。

 

ここでシンがギアスでレイラを殺そうとするも、
そもそも条件が違う気もするのですが、
そのギアスに対してレイラの持つギアスの力がカウンターを与えます。
この時点では苦しむシンだけで、
レイラのギアスの詳細はわかりません。
けど、命令させる感じではないし何らかの現象が起こった映像演出もありません。
レイラ自身も意識的に力を振るったようではないので、
レイラのギアス能力に関しては少し分かりにくいシーンですね。

 

本シリーズのさまざまな設定で、まだよく分からない点がありますが、
次回最終章ですっきり分かるのか?
まあ、描き切らないのもSFなのでしょうけど。

 

交渉が決裂し、しかしワイヴァン隊の長距離輸送機である『アポロンの馬車』の
情報を入手したシンは、
その使用先をブリタニア本国ペンドラゴン、
皇帝のいる宮殿だと語る。
これによって皇帝が殺されればその混乱で世界中が大戦状態になることが予想される。
シンの望みはそれによる世界の混乱と破滅のようで、
レイラとの会話でもうかがえた彼の人間への深い失望は、
世界をぶっ壊す、世界など壊れてしまえ、
という思いであり、ユーロブリタニアの全権を手にして今から実行されようとしている。

 

これはアキトほか親類を殺したギアスをシンが使った理由と関係がありそうです。
若い頃、麒麟児のシンが人間の嘘で固められた醜い部分を見て、
どれほどの失望があったのか、と。
そういうところは昔のシャルルとV.V.と重なる要素なのでしょう。
優れた人間だからこそ、人間に理想を見て、
そして現実の多くの人間の醜いありさまに
『人間とはこんなものか』と失望し深い絶望を抱く、
というのはありそうな話です。

 

シンのギアスを跳ね除けるレイラに怒った彼は
交渉を放棄してレイラたちを亡き者にしよとする。
レイラを守るウォリックと、
上空からの一撃。

 

ここでアシュレイも来るのは、方舟に自分がいるのに爆薬を仕掛けた、
つまり捨て駒にして裏切ったからこそ反旗を翻したということでしょうね。
それにアキトには助けられたのと、仇討を許された借りがある。
共闘も援助も彼には当然だったのかもしれません。
突然現れて態度のでかいアシュレイに
ウォリックの台詞はホントそれでしょう。

 

兄シンの言葉に乗らずにレイラと逃げるアキトは、
憎しみ殺し合う世界から脱出するかのようで、
(このシーンではアキト機がレイラをお姫様だっこしている)
その先には
これまで心がばらばらだったウォリックとアシュレイまでもが待っている。
このシーンが挿入歌の歌詞で入るのですが、
その歌詞の内容を肯定するかのように
憎しみ戦い合うことから離れ分かり合うという夢が
彼らの間でこの瞬間、現実になっていて泣けます。

 

コードギアスは戦争の物語で、
人の醜さも強く描きますが、
本作ではその否定と進歩としての他者との分かり合いを
本作らしい描き方がされていると思いました。

 

これまで本シリーズを見て感じたそれは、
未知の人間との衝突も含む関係を経て、
互いを知り、認め、愛するという当たり前の過程を経ての
信じるという分かり合いの成立。

 

ある種、バラバラだったワイヴァン隊の面々が一つになる過程は、
家族のような親密さなのかもしれません。
身内を愛するように隣人と接し、その人を知り、認める。
それが本作の『分かり合い』の形のようにも思えます。

 

これだけでもアキトとレイラの物語は半ば目的を達したといえるかもしれませんが、
しかしまだシンとの決着や、
E.U.の動向があります。
軍師ジュリアス・キングスレイに関してはシンとの戦闘でスザクとともに幽閉されています。
この軍師による作戦はこれ以上はないようで、
次回は城を包囲したシンの部隊とレイラたちの戦いが焦点となりそうです。

 

そう思ってED曲が済むと、
一人方舟にのこり地上のブリタニア部隊に爆撃をしていたユキヤが
方舟ごと撃墜され……、
次回予告はアキトのおさげを手にして古城の雪のなか進むレイラが……
これは、アキトたちの生存に関してはまだ予断を許さない展開があるかもしれません。

 

シンとレイラのギアス、
BRS、
スマイラスと管理者、
E.U.とブリタニアの動向、
アキトとシンとの決着、
ワイヴァン隊の結末……など、最終章を確認しましょう。

 

ではでは~。