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とーしろさんの趣味よもやま話の通用口。

「少年たちの前日譚『四月は君の嘘』OAD#23感想」


今回は、アニメ『四月は君の嘘』の
原作最終11巻のオリジナルアニメーションDVDつき限定版の
『#23 MOMENTS』
の感想を書きたいと思います。
お付き合いいただけると幸いです。

 

TV版アニメは全22話で完結し、
その内容とは別にアニメ円盤特典として付属した
新川直司先生作による四月は君の嘘の短編冊子があり、
本作はその短編からTVシリーズの内容を補完した内容となっています。

 

内容を追って感想を書いていきます。

 

まず、絵見と(そしてその隣の金髪のあの子)が魅了された公生の初演から始まります。
TV版でもあった、公生の演奏に打ち抜かれた絵見がピアニストを志すシーンと、
母親の教育で始めた習い事のひとつでピアノの適正を見出され、
その時点では物欲のためにやらされていた感の武士が登場します。

 

幼い頃からの絵見と武士の公生へ挑む様子、
当時からあった落合先生と高柳先生の場外戦
(上っ面は笑いあって腹の内はドロ黒という……)

 

そして公生をヒーローとみなして倒すべき目標と設定して、
武士はピアノの練習に本気で向き合っていきます。
ここで、顔色ひとつ変えない西武のガンマンのような公生が
どんな練習をしているのかを武士はこっそり有馬宅へ様子をうかがいにいきます。
この描写は四月は君の嘘の小説であったシーンですが、
この道中で武士はあるケーキ屋の開店準備をしている男性とであって道をききます。

 

この男性こそ、かをりの父親ですね。
本編でもラストシーンで幼い頃の写真にかをりと公生が映っていますが、
これは本OADでも描かれていますが公生の初演の際に撮られた写真で、
それからしばらくしてかをりのヴァイオリン転向と
ケーキ屋の名前決め、
そして武士とのこのシーンに繋がるわけです。

 

公生の練習の苛烈さに刺激を受けた武士は、
自分もそのくらいの練習をしなくては公生のようなヒーローにはなれない、
と奮起して練習することに。

 

苛烈な公生の練習に、自分にあそこまでのことが出来るのか?
と少し不安になった様子の武士ですが、
すぐに彼に決意の表情が浮かびます。
できるかじゃない、やるんだ!――みたいに。

 

その成果を試すべくコンクールの舞台に。
しかし、そこには自分とは異なった情感を最上とする演奏で観客を沸かせる絵見の姿が。

絵見は公生の初演に魅せられそれを超えるべく感情的で情熱的な演奏を磨いている。
だが絵見にすれば本編で公生のヒューマンメトロノームに苛立っていたいように
今のコンクール仕様の公生の演奏に敵対心を強く抱いていた。
譜面には『私が必ず勝つ!』
とあるように公生にコンクールの成績で上回ることで
ヒューマンメトロノームの演奏を否定して、
かつての初演のような公生の演奏を思い出して欲しい、
という当時から変わらない彼女なりの戦いの姿勢が表れています。

 

この絵見とので出会いから武士は揺らぎが生じる。
価値観や信念のブレ。
一見強そうなイメージの武士の子供のころから揺らぎがちなメンタルが
本編よりも一層詳細に描かれています。

 

そもそも、物欲でピアノなんてチョロいと思ってやっていた武士が、
公生にヒーローを見出すというのは、
それは超えるべき憧れの背中となり、
武士のなかで目指す目標ができたと言えます。
公生にヒーローを見た衝撃は
武士にとって
たいした目的もなくやっていたピアノに力をいれる理由が出来た瞬間だったと思います。

 

絵見と同じ実力あふれる才人であった武士だが、
持っていただけに大抵のことはつまらなく、武士は退屈を持て余していた。
そういう風に彼は絵見とは違っていた。
その彼に本気で何かをやる理由ができたのだと思います。

 

反面、絵見は才能を断捨離してミニマム化し、早々にピアノに特化していった人間。
けれど、それをさせた、『人生を変えられた』存在である有馬公生のピアノは
思わしくない方向に様変わりした。
だからこその絵見の苛立ちだったのだと思いますし、
上っ面ではクールにしていても内面では色々な形で意識しまくりだったのでしょう。

 

絵見によって自身の壁にぶつかり、また公生の努力する姿に刺激をもらおうと
武士は再度公生のもとに向かいますが、
その先には椿と渡とともに土陵橋から飛び込んで遊ぶ公生の姿が。

 

これによって煮詰まった時には遊ぶこと、気分を変えることも時に必要、
と武士は学びますが、
武士にとってはこのように本当に色々なことが公生から学びとしてもたらされていて、
昔から影響をよく受けていた、公生の存在がとても大きかったのだと思わされます。

 

絵見は絵見で打倒有馬で練習に熱中するあまり腱鞘炎を起こして
コンクールの結果に影響が。
けれど、こういう時間を通して二人は公生とは関係のないところで
自分にとってのピアノとはどういうものか、
ピアノを演奏すること自体が好き、という思いをほのかに培っていたようです。

 

OADではそんな絵見と武士の昔から変わらない様子が描かれていたとも言えます。
季節は春になり、
コンサートホール前の公園には丸山の遊具が作られ始めていて、
それを幼いかをりが目撃しているシーンも。
そして、ある演奏会の日、
絵見と武士の傍らには公生が。
武士たちの気持ちをよそに、公生は今日演奏を聴きに来てくれる母のことを思っていた……。

 

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 ©新川直司講談社/「四月は君の嘘」製作委員会

 

これが公生と母、早希の最初で最後の衝突、
公生の後悔の種となり、
病気の根っことなった間違った自己主張へと繋がっていくわけです。

 

そして、母の他界と公生の音が聴こえなくなる症状がおき、
モノトーンの始まり、
アニメ第1話の始まりとなるわけですね。

 

そんなわけで、本作は本編の補完と前日譚をまとめて行った感じの内容だったと言えます。

それでも円盤特典の短編漫画集の方がより内容は濃いと言えますので、
興味のある方は(法に触れない)なんらかの手段で読んでみると良いかと思います。

 

OADであと気になった点は、
キャストのなかに
『佐和』というキャラがいたことです。
出てくる女の子でいうと、
かをりの友人の『せっちゃん』が同じくキャストに並んでいますが、それとは別のようです。
特典漫画ででていた『たかポン』かもしれないですが、
彼女はかをり14歳時にバレエでテレビに特集され、
名前が『高森梓』と明示されており、佐和とは別口であることが分かります。

 

この『佐和』が誰かと本作を探してみると、
5:40~6:00あたりで小学生のピアノコンクールを鑑賞する幼いかをりと、
それに付き合う友人がでてきます。

 

この二人の会話を聴くと、
かをりが今はヴァイオリンだが更に昔にピアノをやっていたことを知らない友人
であることが分かります。
このことからもおそらくこの女の子は『せっちゃん』とは別人で、
この子が『佐和』なのではないかと思われます。

 

容姿は髪の色もミニツインテールも同じなのでちょっと疑問ですが。

 

四月は君の嘘本編、原作も、『佐和』なるキャラの出番は記憶にありません。
じゃあこれは誰?となったとき、
新川先生で思い当たるのが、
サッカーの『さよなら』シリーズに登場する
主人公恩田の友人の『越前佐和』という女の子です。

 

これはもしかしたら、
同じ新川作品としての友情出演かもしれません。
それに原作を読んでいる人は知っていると思うのですが、
くる学祭などでも佐和によく似たボブカットの女の子(中学か高校生風)
が描かれています。

 

興味ある方はコミックス9巻をチェックしてみてください。
全巻を通してみると他にも佐和っぽい髪型のキャラは描かれていますので、
この機にコミックスをすべて読み直すのもまた楽しいと思います。

 

ここから想像を膨らませると、佐和ちゃんはサッカーの部活のかたわら、
君嘘世界の住人の一人として公生たちの演奏を聴いていたのかもしれません。
じつは佐和の趣味が『音楽演奏会での鑑賞』、だったりするのかもしれません。
そんなちょっとニヤリとする
遊び心のある演出がエンドロールには含まれいたのかもしれませんね。

 

あと、絵見がソーダのアイスが好き、
というのは、別の言い方で『サイダー』⇒『才ダー』(才能人)という意味合いで、
武士は『うまい棒』⇒『(色々やることが)うまい坊主』だったのでしょう。

 

それでいうと、そろそろ分かっている人も増えただろうし
言っても問題ないと思うのですが、

 

カヌレが好き』、とは
カヌレは卵黄を多く使ったお菓子で、
卵黄⇒黄身⇒君⇒君が好きです
という意味合いがあるのだと思います。

 

つまり、カヌレが好きだったかをりはずっと君が好きだと思っていて、
カヌレを贈っていた公生も、当初はその気持ちに嘘をついていたにしても、
『君が好きです』
と図らずも表現していた、
作品はそう暗示していた、ということになります。
分かっている方も多かったと思いますが、本作はそんな暗喩にあふれています。

 

そんな味わい深さを最後に書いて、
四月は君の嘘』のTVアニメも本OAD含む全23話で感想改稿もフィナーレとしたいと思います。

 

興味のある方は本ブログの
「『四月は君の嘘』追走!詳細設定・伏線考察Coda1」~
も読んでいただけると嬉しいです。

 

ではでは~。
君嘘大好き!!!!ヽ(*´∀`)八(´∀`*)ノイエーイ