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とーしろさんの趣味よもやま話の通用口。

「椿の気づきと変化の始まり。『四月は君の嘘』第14話感想・改稿」

 

アニメ『四月は君の嘘』第14話の感想、改稿文になります。
おつきあいくださると幸いです。

 

あまりしてこなかった切り出しかたなのですが、
この第14話を簡潔にまとめると、
ガラコンにこなかったかをりの事情と、
音楽と向き合うことを再び始めた公生のこれからについての向き合い、
そして椿の自分の気持ちについての向き合いが始まったことが
印象深い回だったと、本話はいえると思います。
今回はその様子を追っていきましょう。

 

冒頭でかをりがガラコンにこなった理由を知り、
病院へ急行する公生。
知らせに来た椿をおっぽって全力ダッシュでかをりのもとへ向かう公生に、
のこされた椿の心境はいかほどだったか。
かをりは渡に紹介して彼を好きなのにここまでの反応をみせる公生に、
共演をした相手とはいえずいぶんな熱量で、
あの大人しくて目が輝いていなかった公生の変化にも
椿は複雑な心境だったことでしょう。
これをどうとらえるべきなのか……、
肯定的にとって喜ぶところなのか、
それとも椿にとっては実は不本意なのか……。
自分と当たり前に一緒にいる弟みたいな男の子……
だったはずの公生が。
 

かをりの入院は彼女の言葉では問題はなさそうで、
心配してお見舞いの品として大量の本を持ってきた渡ですが、
二学期には登校してくるからこんなには必要なさそうではあります。

 

ところが、公生や渡たちが帰ったあとでその本の山をみるかをりの口からは、

 

「こんなに読む時間ないよ……」

 

この時、渡の持ってきた本のなかの一冊の、
貸出カードに公生の名前を発見したかをちゃん。
これは読んでみたい感じですかね。

 

この書籍、『いちご同盟』は実際にある作品のようです。
Wikiによると

 

いちご同盟』(いちごどうめい)は
三田誠広の1990年初版の青春長編小説。
1997年に映画化された。
また、1999年にNHK教育テレビにおいて40周年記念番組としてドラマ化された

 

だそうです。
自分も君嘘で知って読んでみたのですが、
主人公がピアノを弾く人間で進路などで悩んでいて、
ヒロインがかをりとリンクする所があって、
この作品のラストで入院している子はどうなるのかというと……。

 

四月は君の嘘の結末はそれに沿う形になるのか?
それとも近づけながらも別物にするのか?
それも来月の月刊マガジンの最終話に注目したいですね。
(2015年当時のこと)

 

そして点滴の再開……かをりの病状は深刻な気配が……。
渡や公生たちとは割とこれまで通り、
元気で明るく話していたかをちゃんですが、
でも……ですよ、
気付かれた方も多いと思うのですが、
この話数の病室でのかをりは、色調が少し色褪せているのです……。
髪の色も、肌の色もやや薄くなっている。
しかもそれはかをりだけだったりします。

 

これはなんですか!?バッドフラグのスメル!
勘弁してください!もー!
本当、かをちゃんはどうなるのか……はらはらです。
 

そして新学期が始まってもかをりは登校せず、
(ここがなんの、誰も言及せずしれっと新学期の登校風景が描かれているのですが、
かをちゃんのいないことをさも当然のように世界は進んでいるようで、
残酷な展開の気配を感じたりもします)
公生は先生に進路についての話をされます。

 

公生の進路。
自分のこれからについての自問がされます。
くわえて柏木さんとのお弁当タイムに斉藤先輩からのメールを受けて喜ぶ椿に、
椿は誰が好きなのか?
という問いかけが柏木さんからなされます。

 

斉藤先輩は憧れの先輩で、
嫌いじゃないから別れていない、という椿。
柏木さんはそんな椿の本心は誰にあるのかを椿に諭そうとします。
いい加減な、そして何かの代償として自分の気持ちとは裏腹な関係をしていたら、
傷つく人が出る。
しかし椿にはどうにも自覚がない。
柏木さんはそれを渡にも相談しますが、
彼は放っておいて、傷ついてボロボロになってでも自分で気づくしかないという。
このあたりはいくたの女の子つきあいを経て鍛えられた渡のメンタルが窺えます。

 

本エピソードはかをりと公生のやり取りから少し離れ、
公生と椿にややフォーカスを強めて彼らの今後に向けてが描かれている気配です。

 

幼い頃、
椿は公生と遊びたいが、公生は音楽にかかりきりで家に誘いにいっても断られ、
学校にもコンクールのための練習で来ない日があり一緒にいられない。
公生と距離をつくる音楽を、椿は本心では嫌います。

 

斉藤先輩との時間でまたしても公生の話(彼氏の前で他の男子の話)
をしてしまいやらかした椿は
帰り道で柏木さんに電話で相談しますが、
椿はここで『自分は誰が好きか?』ということを遅まきながら自問し始めます。

 

一度は椿に反感を持たれた柏木さんの工夫した違うアプローチですね。
別に斉藤先輩との仲を引き裂きたいわけではなく、
ベストの形に誘導して椿には本心から笑って欲しい。
そんな柏木さんの椿への友情を感じます。

 

そんな柏木さんの誘導(嘘)によって公生は椿のもとへ駆けつけます。
自分を心配して走り回ってきたという公生に、
自分が色々考えるこんでいたことから安心を得て二人は夜の浜辺を散歩する。
月の光のもとでの幼馴染の二人の時間。

 

月夜の砂浜をドビュッシーの『月の光』を口ずさんで歩く二人は
どんだけきらきらした青春ですか君たち、
という感じです(笑
でもこのシーンは好きです。
これまでは月は母=亡き人の気配でしたが、
ここでの月は『月が綺麗ですね』『I LOVE YOU』
のニュアンスだと思えるので……、

 

でも個人的な解釈ですが、
愛の確認が月が綺麗だというのは、
ある意味、死をあなたとなら共有したいくらいに好きです、
という意味合いだとも思えて、
どちらにせよ別れの気配をどこかに含んでいる――
好きも愛も肉体的、物理的距離のまえでは永遠ではなく、別れは必然――
のが『月』なのだといえるかもしれません。

 

そう考えると本作の序盤が少年公生が演奏する
『ピアノ・ソナタ第14番「月光」』だったことからも、
この作品は『別れ』の気配を含ませた内容だということなのでしょうか……。
 

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  ©新川直司講談社/「四月は君の嘘」製作委員会

 

 

過去の椿と公生の足跡と、今の二人の足跡の差は、
これが重なることで二人の積み重ねてきた時間と、
そして今の二人の差が描かれているように感じます。

 

前話で公生が変わったことに対して、
自分に違和感を覚えた椿はここでも互いの違いがでてきたことを知るわけですね。

 

公生は先に向かって進み始めている。
けれど椿は?

 

その差、そして二人の隔たりを作るのは
今も昔も椿にとっては音楽ですね。
音楽が公生との距離を生じさせる。
それに対して椿は耳をふさぎ、自分の本心から目をそらし、
自分の気持ちに気づこうとしないけれど、
公生が進路について決めたことを聞かされて、
彼が明確に離れていくことを知ったとき、
一緒にいられなくなると知らされたとき、
どうしようもなくそのことが嫌だったのでしょう。
離れてしまう事実が悲しくて涙がしらずあふれてくるくらいに。

 

公生に見せようと一生懸命ごしごし作った虹色に輝く泥団子。
自分の分だけではなく、
公生のぶんも一緒に。
それは音楽のせいで今は会えなくても、
公生が喜んで笑う顔が見たかったからでしょう。
なんですかそれは。
そんなのはその相手のことが好き以外の何の理由があるのでしょうか、と。

 

泣き出して全力で走って公生から逃げていく椿ですが、
その涙のわけ、
これまでずっと見たかった公生の笑顔。
元気になって欲しかったわけ。
それらの理由を考えて、ようやく自分の気持ちに気づく椿でした。

 

「私、バカだなあ……」

 

がガサツ幼馴染ヒロインの変化を物語ります。
ここから椿はどうなっていくのか……。
公生、かをりだけではなく椿もまた本作の後半戦の見どころとなりそうです。

 

そうみると君嘘は公生だけではなく、
かをりや椿、渡などそれぞれ皆の青春を描いている作品でもあると
改めて思えますね。

 

本話の感想改稿の頭で書いたように、
このエピソードは彼ら三人の今後の始まりを示すような内容だったと言えると思います。
椿は今後、公生の隣で笑顔を見られるのか?
公生の進路、ピアノはどうなっていくのか?
そしてかをりの病気の具合はどうなるのか?
それらも気にしながら

 

ではまた君嘘の感想記事で~♪